2019/12/20
今日はまさに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の典型的な話JASRACの話です。
日本音楽著作権協会(JASRAC)が今年(2017年)6月7日、
同協会が管理する著作物を音楽教室で演奏する場合に、教室が得た受講料の2.5%を徴収する使用料規定を文化庁に届け出ました。
自分はこの徴収に対して断固反対します。その理由を今日は記事にさせて頂きました。
JASRACとこの件で争っている「音楽教育を守る会」については
こちら⇒音楽教育を守る会HP
音楽教育を守る会の署名はこちらから!是非署名お願いします!
Contents
- 1 JASRACの音楽教室での演奏権料徴収に反対する10の理由
- 1.1 1.「公衆」に対する演奏ではないこと
- 1.2 2.「聞かせることを目的とした」演奏ではないこと
- 1.3 3.著作権法の立法目的(法第1条)にもそぐわないこと
- 1.4 4.営利目的の演奏というのも無理があると思う。
- 1.5 5.公平性を保つ為という言い分にもかなり無理がある。
- 1.6 6.そもそも音楽教室は著作料をルールに従って払っている
- 1.7 7.JASRACがコロコロと法律解釈を変える事自体が非常に危険
- 1.8 8.これまでの運用のとの整合性どうするの?
- 1.9 9.JASRACの独占状態が解消されないと話しにならない。
- 1.10 10.JASRACの言う「創造のサイクル」の結果が出来ていない
- 1.11 関連
JASRACの音楽教室での演奏権料徴収に反対する10の理由
反対の理由1~3は上記「音楽教育を守る会」が6月20日に東京地裁に訴訟をした3点と合わせております。
また自分はその3点以外にも反対したい理由が多々ありますので書きます。
また、大前提として著作権を守る事は当然大事な事だと自分は考えております。
1.「公衆」に対する演奏ではないこと
引用
音楽教室における演奏は、教師と生徒が教育目的で結合された特定かつ少数の者の間の演奏であり、「公衆」に対する演奏ではない。1対1の個人レッスンや講師1名と3~5名程度の生徒で行われるレッスンにおける演奏が「公衆」に対する演奏であるとは考えられない。
現行法制定時の資料にも、学校教育であるか社会教育であるかを問わず、教室という閉鎖的な場における著作物の使用は「公でない使用」であることが明記されており、以後、45年以上の間、社会教育における教室での授業については、演奏権が及ばないと理解されてきた。
今回JASRACが徴収しようとしているのは著作権の中では「演奏権」と呼ばれる部分です。
この演奏権というのは第22条にあり
「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」
というものです。
つまり、(営利目的で)公衆に演奏する場合はJASRACの許可が要りますよ、お金払ってくれたら許可しますよ。
という事です。まあ解ります。
当然、有料のコンサートやライブハウスで人に音楽を聴かせる場合は演奏権料を払う必要があります。これは理解できます。
しかし、今回JASRACが言っているのは、音楽教室で先生が生徒に見本として聞かせるのも、生徒が先生に聞かせるのも「公衆への演奏」だと言っております。
正直、これまで40年以上生きてきて、先生から見た生徒の事を「公衆」と言っているのはJASRAC以外に聞いた事がありません。
例えば今回のこの件を全く知らない人を対象にして
コンサートで客に演奏した人に「公衆に対して演奏しましたね?」と聞けば
普通は「そうですね」と言うでしょう。
生徒に見本を演奏した先生に「公衆に対して演奏しましたね?」と聞けば
100人中100人が「は?」って言うでしょう。
ちなみに、特許法での公衆の定義は「不特定多数の者」となっています。これは一般的な考えと同じですね。
著作権法では「特定かつ多数の者が含まれる」となっています。
つまり、「不特定多数の者」または「特定かつ多数の者」である事が公衆の定義ですので、多数である事は必須条件です。
ウチの娘は音楽教室で1対1で授業をしていますが、どう考えても多数ではありません。
2.「聞かせることを目的とした」演奏ではないこと
引用
音楽著作物の価値は人に感動を与えるところにあるが、音楽教室での教師の演奏、生徒の演奏いずれも音楽を通じて聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏ではなく、「聞かせることを目的」とはしていない。
先生から生徒への見本は、演奏技術を教える事が目的であって、聞かせる事が目的ではありません。
演奏技術の為であるので、先生も生徒も自分が聞きたい曲だけ使って練習している訳ではありません。
時には好きじゃない曲だって練習では使うでしょう。
3.著作権法の立法目的(法第1条)にもそぐわないこと
引用
教育のための著作物の利用は、第1条の「文化的所産の公正な利用」に含まれるところであり、また民間の音楽教室という社会教育なくして音楽文化の発展はあり得ず、社会教育における音楽教育は、まさに同条の「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的を実現するものであり、このような著作権法の目的に背を向けるような第22条の解釈は許されない。
フェアユースの考え方ですね。
アメリカは著作権にうるさい国ですが、一方でフェアユース法という法律があり、社会や著作者に対する貢献度や、著作物の使用量等から著作料を払わなくても良い使い方が認められています。これは裁量の問題で非常に難しい法律で、ほぼ毎回裁判で「これならOK」「これならダメ」が決まる感じです(もちろん一定のルールはあります)
さてここまでが、
「音楽教育を守る会」の今回の訴訟と同じ内容です。
次のからは私が反対したい理由を追加で挙げていきます。
4.営利目的の演奏というのも無理があると思う。
音楽教室は確かに営利団体です。
しかし、音楽教室は演奏技術を教える対価としてお金を貰っているので聞かせる事を目的としていません。
たとえば、自分は楽譜があったとしても人に音楽を教えることは出来ません。
楽譜とCDがあれば、誰でも教えれるものではない、教える技術あってこそ利益が成り立っている事を考えると営利目的の公衆への演奏というのは無理があると感じます。
5.公平性を保つ為という言い分にもかなり無理がある。
JASRACが今回の音楽教室への演奏権の徴収に強気な理由は、
過去に社交ダンス教室で指導で流す音楽から演奏権料を取る裁判の際に
生徒のいるレッスンで流す音楽は「公衆へ聞かせる演奏」と認められてJASRACが勝っているからです。
その上で、『ダンス教室やカラオケ教室では「協議の末」著作料を頂いているので「公平性を保つ為」音楽教室も著作料を払いなさい。』
とJASRACは言ってるんですが、この公平性にも無理があると思います。
そもそも、「協議の末」なんて言ってますが、上記の通り裁判の結果無理やり払わせてるだけでダンス教室もカラオケ教室も納得して払っている訳ではありません。
どうしても公平性を保ちたいならば、これまで支払っているダンス教室やカラオケ教室からも取らなきゃ良いだけなんですが・・・
ただ、個人的には過去の判決なんて関係ないと思います。
過去の判例で全て決まるならそもそも裁判なんてする必要がありません。
社交ダンス教室と音楽教室では異なる部分もあります、
社交ダンス教室ではCDを流していたに過ぎませんが、音楽教室では自分で演奏、必ず同じ判決が出るとは限りません。
また、そもそも、上記判決は最高裁まで行っていません。
最高裁まで行けばどちらが勝つかは解りません。
6.そもそも音楽教室は著作料をルールに従って払っている
最初に書いたとおり、法に従って著作料を払う事は当然だと思いますし、
そして、当然ですが音楽教室はこれまでもルールに従って著作権料を払っています。
楽譜において著作料を払っていますし、発表会など明らかに公衆への演奏の場合は著作料を払っています。
音楽教室は著作料を払っていないのではなく、JASRAC側が法律の解釈を変えて練習でも払えと言っているだけです。
更に問題なのが、JASRAC側がまるで音楽教室の事を著作権を無視している違法団体であるかの様な言い方をしている所です。
しっかり著作料を払っている人に「対価を払うつもりがない」などとレッテルを貼るJASRACの感覚の方が到底理解できないですね。
7.JASRACがコロコロと法律解釈を変える事自体が非常に危険
そもそもこれまで著作料を取っていなかった教育の場から著作料を取るようになったのは2000年以降から急にです。
既に今年に入ってからも2月に時は「個人の音楽教室は徴収対象外」と言っていたのにも関わらず、わずか4ヶ月後の6月には「2018年から個人の音楽教室からも取ります」と話が変わっている。
よく言われる「JASRACはそのうち鼻歌からも金を取りそうだ」という皮肉に対して
JASRACは「営利目的じゃないの取るわけないだろ」と小馬鹿にしたようにマジレスしてきますが、
日本人の感覚では明らかに公衆への演奏ではない「生徒への見本」を「公衆への演奏だ」と言い張るJASRACが「鼻歌も営利目的だ」っていつ言い出してもおかしく無いと思うのですが・・・・
いずれにしても、本来はまず国会で法律整備からするべき所をJASRACがコロコロと解釈を変える事はおかしいと思うのですが。
国民が選挙で決めた立法府(国会議員)以外の人間が、違法かどうかのラインを決めれるなんておかしいと思うのですが。
8.これまでの運用のとの整合性どうするの?
7に書いたとおり、JASRACが勝手に法解釈を変えてる訳ですが、これまで長く続いてきた運用との整合性どうするんですかね。
1970年からほぼ変わらず続いている、現行の法律のまま音楽教室から演奏権料を徴収するとなると、これまでが違法状態だった事になりますが、過去に遡って取らない矛盾はどうするつもりなんでしょうね。
また、音楽教室側もこれまでは演奏権料が掛からない前提で教材やカリキュラムや受講料(上場企業なら来期の営業利益の予測も)決めていた訳で、最初からJASRAC管理曲には演奏権料が掛かると解っていれば異なる教材やカリキュラムにしていたはずです。
今更、JASRACの管理曲を使った場合は払ってと言われても、強制徴収と変わらないと思うのですが。
個人的にはもし演奏権料を取るなら、国会にて、「音楽教室での見本についても演奏権料がかかる」という法律を具体的に明記してから取るべきだと思うんですよね。
それなら音楽教室側も準備が出来ますし、法律変わったからこれからは違法ですって言えるし、そもそも国会議員が決めた事なら国民が決めた事に等しいので問題ないと思うんですよね。
国民側に不満があれば、次の選挙で決めた国会議員なり、政党なりに投票しなければ良いですし。
何度も言いますが、著作権は絶対守られるべきだと思うので、法が正しく運用されている上で取るならなんの問題もないと思うんですよね。
JASRACが勝手にいろいろルールを作っている事が一番の問題だと思うのです(文化庁の許可は必要とは言え文化庁も行政府ですしねえ。)
9.JASRACの独占状態が解消されないと話しにならない。
ここまで批判を書くと大抵、JASRAC擁護派から「そんなにJASRACが嫌なら自分で著作権を管理すれば良い」という話が出ますが、それなら音楽の著作権をJASRACがほぼ独占管理している状況を改善して欲しいと思います。
放送での包括契約も2015年に独占禁止法違反の判決を受けてやっと改善しましたが、最高裁で独占禁止法違反の判決を受けるまでは断固として改善しようとしなかったですからね。
そのあたりの経緯はこちらが詳しいですが
放送の独占禁止は改善されたとは言え、まだまだ著作権管理はJASRACがほぼ独占状態です。この状況で包括契約を行うと放送の時と同じように、他の著作権会社の参入を妨げる事になります。
10.JASRACの言う「創造のサイクル」の結果が出来ていない
JASRACは「著作権を保護し、使用料をいただいて著作者に分配することが、次の創作を支えていく『創造のサイクル』維持につながる」と言っています。
それは解りますし、何度も書きますが著作権は守られるべきだし、音楽が使われる事で作った人に対価が払われるシステムとは大事なものである事は確かです。
しかし、教育目的の現場からもお金をとるなんて、「創造のサイクル」が悪いサイクルになると思います。
教育なんてむしろ社会の好サイクルを生むのもので、消費税の高い欧州なんかは福祉費用の多くを教育に使っています。
なぜなら、お金をかけないで教育が出来る環境を作る事が社会にとって最大の好循環を生むからです。
教育にお金が掛かる社会というのは格差が生まれるだけ。
多くの人が言っていますが、音楽教室からの使用料徴収は確実に音楽文化の衰退につながるでしょう。
JASRACのやっている事が正しければ、著作権管理を強化すればするほど音楽業界は拡大してるハズですが、
俺にはJASRACが頑張れば頑張るほど音楽業界は衰退していっているようにしか見えないのですが。
結局、音楽教室がからの演奏権の徴収も含め、今のJASRACの徴収の仕方はやり過ぎだと思います。
(そのくせ配分方式は微妙みたいですが・・・)
フェアユースや広告効果を無視して、音楽聴くなら対価を払いなさいとJASRACは言ってるのですが、
やり過ぎれば音楽に触れる機会が減りますます音楽が売れなくなると思います。
まさに、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ですね。
改めて、音楽教育を守る会の署名はこちらから!
是非署名お願いします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
コメント
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